日本珠算連盟 秦野支部

 小学校算数の必須指導の一つとして取り上げられている「そろばん」指導は、その指導者不足の著しい状況下において、その殆どが省略されるか、もしくは短時間の説明程度に終わっているのが、全国的な現状である。しかし、2002年より施行される「新学習指導要領」に盛り込まれている総合学習(=総合的な学習の時間)の年間135時間の利用法は、各学校が自由にその内容を決定出来るため、一部学校ではそれを「珠算指導」に当てることを決定しているとの情報もある。それは総合学習を推進する理由の一つとして、あらゆる日本文化の継承としての指導や伝達を奨励することも盛り込まれているため、小学生に必要な算数の基礎的理解度の高揚のため「珠算指導」に力点を置いたということだろう。 なお、上記の2002年施行は全国的に全校が実行する時であり、現在はその移行措置として実施している学校が順次増加している。この機会を看過していては、そろばん学習の道は永遠に閉ざされてしまう恐れがある。21世紀の新しい「新学習指導要領」に取り入れられた「総合学習」の中でこそ、珠算指導者がその専門的知識を駆使して、今まで入り込めなかった各小学校にその技術を、日本文化の継承の一つとして、また、算数の基礎的な理解の一助としてそろばん指導を積極的に行っていく時だろう。本稿では、小学校の算数授業でそろばん指導を行っている日珠連秦野支部の事例をご紹介する。

◇小学校の算数授業で”ソロバン指導”が始まった

 「おはようございます。今日から1週間、皆さんと一緒にそろばんのお勉強をさせて頂きます○○です。よろしくお願いします。」という挨拶から始まった1日3クラス、各7時限のそろばん授業は、子供たちの期待と不安の入り交じった好奇な眼差しに迎えられて始まった。

 日珠連秦野支部は、秦野商工会議所の専務理事をその支部長に迎え、顧問の一人として秦野市の教育長にご就任頂いている。その関係もあり、8年前の平成4年には、当時の副支部長が教育長の承諾を得て、全校校長会で各小学校における珠算学習の徹底指導を要請し、その場で全校長会の承認のもと、市の「算数指導研究会」の諸先生方(参加教員31名)の前で、日本珠算連盟発行の「小学校そろばん」(児童用)の使用法や珠算学習の算数教育に与える利点等を約1時間、講義している。
 秦野支部では、「小学校そろばん」発行当時より、それを市内全校に送付して該当児童に配布して頂いているが、ただ単にその小冊子を各校に送付するのみではなく、必ず、校長や教頭の在校を確認し、訪問の主旨を述べて、その承諾を得てから副支部長や理事が直接挨拶と珠算指導の要請を兼ねて手渡しする、ということを実行してきている。
 毎年12月の第2日曜日に実施している「全国小中学生通信珠算競技大会・優良生徒表彰」へは、教育長のご臨席を頂き当秦野支部関係者をはじめ、多くの選手やその保護者の方々に大変良い影響を与えている。
 このような懸命な活動の一環から生まれたのが、頭書の書き出しにある秦野市立南ヶ丘小学校からの珠算指導である。秦野支部では、市内の各校長に直接面会し、"小学校そろばん"の使用と珠算学習の実施をお願いして回っていたところ、南ヶ丘小学校の校長から「来年2月頃、専門の珠算の先生に子どもたちの指導をお願いするかも知れません。その節はよろしく。」という言葉を掛けられ、本年1月の中旬に、「平成12年2月21日(月)〜29日(火)、小学3年生、3クラス各1時限づつ1週間、毎日午前8時45分から11時25分まで、大変でしょうが宜しくお願いします。」という正式な要請があった。
 派遣教師の件は昨年の11月、南ヶ丘小学校校長からのお話のあった時点で考慮していたというが、小学校での講義に営利的な要因を表面化してはならないとの配慮から、現在珠算指導をしていない同支部の元副支部長に依頼をしている。

◇ソロバン指導に当たって配慮された細かな事項

 以下は、その先生による指導内容を聞き記したもの。
(実施内容全般については、後掲の「指導計画書」を参照。)

 先ず、指導計画書を、当該小学校の校長並びに各担任に提出。それに記載されている指導クラス順位は学校よりの要望。講義に先立ち、次の事柄について配慮をしている。
@7日間の講師としての控室は、校長室の一隅に指定されたので授業開始時間の15分前に入室することにした。
A校長や教頭並びに各教職員及び事務職の人々にも分け隔てなく、また、相手の言動に同調することなく、全て敬語で応答。また、質問や雑談には応じたが、余談はできるだけ避けるように留意した。
B生徒に対しては、男の子は「君」女の子は「さん」づけで呼び、声を大きくテンポは緩やかにして、語尾は少し高くし最後の一言の発音を聞き取りやすくする事に留意した。
C授業終了後は、管理職に挨拶して速やかに退校。

◇指導内容の概略

@1日目は、先ず生徒の興味付けのため約20分間、指の運動や、数字遊びで生徒との心の交流をはかり、親指や人指し指の役目や、その指を使う理由などを説明しながら、運指と置数の練習を、教本(小学校そろばん)P2・3並びに予備教材(No5まで準備)を使って、繰り上がり、繰り下がりのない運指と置数の練習をし、最後に「10 3 8 8 7 8 3 ・ 2 3 8 2 9 8 3 ・ 8 8 0 ! 8 8 0 !」(父さんは花屋さん・兄さんは肉屋さん・はやれ!はやれ!)など。授業の最後に、最初に興味付けした数字遊びを、「出来る人は、明日までに幾つか考えて来てください」と伝えて終了。翌日、子供達からは、驚くほど沢山の提出があった。
 指導予定表では、初日「算盤の歴史」を話し、2日目に「指のお話」や「数字遊び」をする予定だったが、子どもたちの緊張度が高かったため、急遽変更してそれを行い、緊張度を緩めてスムーズな交流を図ることに専念した。
A2日目からは、前記のように予定表どうり進行。但し、毎日異なった指の運動や、対象学童が理解できる程度の数字遊びを10分から15分程度実施し、精神的交流を十分図ってから、その日の予定授業に移行するように心掛けた。

3年生珠算指導計画書(南ヶ丘小学校、H12.2.21〜29)

21 22 23 24 25 28 29
曜日


8:45

9:30
1組
自己紹介
算盤の歴史
枠・桁・1玉
5玉・定位点
指の役目

教科書69〜70
緑本P.2〜3
1組
指の話し
1日目の復習
Pt No.1
  30問題
注 指使い
数字の遊び
8783
花屋さん等々
3組
5玉の分解
五の説明
(握り拳で)
4+1
5-1
Pt No.2
教科書P.71
緑本P.4〜5
1組
5玉の分解の
復習
Pt No.2
  30問題


教科書P.71
緑本P.4〜5
1組
十位への繰り
上がり、繰り
下がり
Pt No.3
  30問題

教科書P.72
緑本P.6&7
2組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
Pt No.4
  20問題
教科書P.73
緑本P.9
3組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
緑本P.10〜12
Pt No.5

最後の挨拶
2

9:35

10:20
3組
自己紹介
算盤の歴史
枠・桁・1玉
5玉・定位点
指の役目

教科書69〜70
緑本P.3
2組
指の話し
1日目の復習
Pt No.1
  30問題
注 指使い
数字の遊び
8783
花屋さん等々
2組
5玉の分解
五の説明
(握り拳で)
4+1
5-1
Pt No.2
教科書P.71
緑本P.4〜5
3組
5玉の分解の
復習
Pt No.2
  30問題


教科書P.71
緑本P.4〜5
3組
十位への繰り
上がり、繰り
下がり
Pt No.3
  30問題

教科書P.72
緑本P.6&7
1組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
Pt No.4
  20問題
教科書P.73
緑本P.9
1組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
緑本P.10〜12
Pt No.5

最後の挨拶
3

10:40

11:25
2組
自己紹介
算盤の歴史
枠・桁・1玉
5玉・定位点
指の役目

教科書69〜70
緑本P.3
3組
指の話し
1日目の復習
Pt No.1
  30問題
注 指使い
数字の遊び
8783
花屋さん等々
1組
5玉の分解
五の説明
(握り拳で)
4+1
5-1
Pt No.2
教科書P.71
緑本P.4〜5
2組
5玉の分解の
復習
Pt No.2
  30問題


教科書P.71
緑本P.4〜5
2組
十位への繰り
上がり、繰り
下がり
Pt No.3
  30問題

教科書P.72
緑本P.6&7
3組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
Pt No.4
  20問題
教科書P.73
緑本P.9
2組
5と6・7・
8・9の繰り
上がりと繰り
下がり
緑本P.10〜12
Pt No.5

最後の挨拶
 注 緑本=小学校そろばん。 Pt=補助プリント。 教科書=算数の教科書。       プリント各120枚

 

★日本珠算連盟秦野支部・草柳副支部長のコメント

 今回の情報提供をしていただいた日珠連秦野支部副支部長・草柳康子氏(日本珠算連盟経営部会副部長)は、次のように語っている。
 「国難とも憂慮される少子化に加え、日々発展する各種事務機器に押され「珠算塾」の経営は、現在最悪の状態にあります。しかし、これをただ単に座してその流れをその場限りの繕いで良しとしていては、この世界は日浅くして消滅することは自明の理でありましょう。珠算学習の必要性を再認識して頂く大切な箇所は、教育界と産業界です。全国屈指の珠算団体である日珠連並びにその母体である日本商工会議所の関係諸氏(諸役員)が、それぞれその発想の大転換をなし、この珠算界の窮地を脱皮させる努力をして頂くと同時に、全国の珠算人一人一人が懸命に自分たちで出来る小さな働きかけをすることにより、その業界の人々にその必要性を再認識して頂けるのではないでしょうか。それが私たちの生きる道であり、一つの社会奉仕でもあると思います。素晴らしく誇り高い日本文化の継承者の一人としての・・・・・。」

【この記事に関する問い合わせ先】

日本珠算連盟秦野支部
 〒257-8588  神奈川県秦野市平沢2550−1、秦野商工会議所内
                   電話0463(81)1355、FAX063(82)0273



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