|
<寄稿>
そして科学のゆくえ
日本医科大学基礎医学情報科学センター研究員 |
人間の英知花開くはずの21世紀が、いささか不穏な幕開けになったが、残念ながら、科学の成果と争い・戦争は切り離せないのが実際のところであろう。計算・数学の歴史的変遷をたどって見ても、食物の奪い合い・分配から、やがて敵の攻撃を防ぐための砦や城壁構築のための代数・幾何へ、そして弾道計算の微分方程式へと複雑になり、第二次世界大戦ではその計算のためにコンピュータが生み出された。 |
コンピュータにおいては記憶容量が大きく、クロック(動作時間)が速いものほどすぐれていることになるが、ヒトの脳ではクロック、すなわち神経細胞に発生する活動電位の動作時間は、イオンの出入りのスピードで決まり、頭の回転が速い人も遅い人もそこに違いはない。また、訓練で変わるものでもない。 |
とはいえ確かに、ヒトの脳は類人猿から原人へ、そして現代人へ、その容量を増やしてきた。図1でわかるように、特に類人猿から原人へ移行するあたりから急速に増大している。それはおそらくそのあたりの段階で言語を獲得し、それが脳の急成長をうながしたのだろうと考えられる。その後、言語能力、情報処理能力が増すにつれ、さらに大きくなっていったが、ネアンデルタール人のあたりからはその成長度合いがにぶりだし、その後ほとんど大きさは変わっていない。それは、その頃から情報を脳以外の外部に貯えることができるようになり=cd=ba52=cd=ba52つまり文字が生み出され、脳はもはやそれ以上大きくなる必要がなくなったとも考えられる。もちろん産道を通りうるぎりぎりの大きさであるなどの動物的な制約要素を考える方が自然で、その制約から必然的に外部メモリーとしての文字が生み出されたという結び付け方もできるが=cd=ba52=cd=ba52。 |
|
連合野のはたらき |
それは構造面から見れば、大脳新皮質、それも連合野といわれる部分の発達である。連合野とは図2の白い部分である。この図の斜線部分は外からの情報がまっ先に入るところ、すなわち第1次感覚野といわれるところで、動物でも当然有している。ここに入力された外からの視覚、聴覚などさまざまな情報を連合させて処理するところが連合野といわれる部分で、動物が高等になるほど大きくなる。そしてヒトの大きな特徴は、この連合野の中でも前頭葉(図は脳の左側面で、この図の左が前頭部を示している)が他の動物に比べ非常に大きいことである。それぞれの情報を統合的に整合性を持った処理をするのが前頭葉であり、意欲や推察、創造性など、人間を人間たらしめている場所といってもよいかもしれない。 |
|
外部メモリーとしての道具 |
そして人間は、さらに外部の記録情報や道具との間でも情報交換しながらより高度な情報処理を可能にしてきた。文字は前述の通りその一つであるが、そろばんももちろんそんな道具である。しかし計算をする道具としては今やコンピュータという道具にかなわない。 |
これからの科学は |
脳を科学することは、こころと向き合うこと。切り刻んで分析してしまっては見えてこないが、生きた人間を相手にその思考過程を見ているとやはり意識や心に行き当たる。脳は、原始的な生きるための脳幹部、そして爬虫類の脳から哺乳類の脳へと階層的な構造を持つ。私は、その階層間での情報のやり取りの中にそれぞれのレベルにおける意識があると考えている。最終的にヒトでは左右の脳が分化し、左右間での情報のやり取りの中に言語を介した顕在的な意識が生まれた。そして今回、さらに外部との情報のやり取りを考えてみた。 |